NPO関係の本

■ 成功するNPO・失敗するNPO
大川新人 日本地域社会研究所 1700円

この本はぜひコモンズ書店またはコムケアセンターからご購入下さい。

コムケア活動のスタッフの一人、大川新人さんが書いた本です。
彼の本は以前一度紹介しましたが、この最新作は、コムケア活動に参加してくれた18のNPOや市民活動組織の協力を得て、これからのNPO活動が自立成長していくための指針やヒントをまとめたものです。
チェックリスト付の実践的な本ですが、コムケア仲間に実際の活動を赤裸々にオープンにしてもらったおかげで(全国的に取材をしました)、これからのNPO活動を展望する上での大きな示唆が得られるはずです。
関心をもたれたNPOがあれば、ご紹介すると言うおまけ?つきです。
みんな仲間ですから。

一応、私も「はじめに」を書いていますので、その文章を掲載します。
お読みいただき、もし関心を持ってもらえたら、ぜひご購入下さい。
購入は、コモンズ書店で購入してもらえるととても嬉しいです。
なぜならば、この本を出版するために私は50万円くらいの資金支援をしているし(実は利益が出るだろうと勘違いしていたのですが)、著者の大川さんは原稿料を手にできないのです。この本を編集し装丁までデザインしてくれた宮部さんもただ働きになります。はい。
最近、私が本づくりに関わるとなぜか私も周辺の人も経済的に損をするのですが、困ったものです。
そんなわけで、ぜひこの本を購入して下さい。

大川さんはNPOマネジメントコンサルタントを目指していますが、まあ暫くは仕事にならないでしょうから、原稿料も貴重なのです。
そうした若者を支援するのは、日本社会を荒廃させた私たち世代の責任です。
どなたかバサッと100冊くらい買ってくれませんか。

どうも私が関わった本は、あまりまじめに紹介しない傾向がありますね。
でもこの本は読みやすく、示唆に富む本です。
彼の独断もすくなくないですが、まあ、それがこの本のいいところです。
企業人も行政人もきっと参考になります。
もちろんあなたにも。

■ コミュニティ・ビジネス戦略
藤江俊彦 第一法規 1800円

コミュニティビジネスは最近の流行です。
しかしどうも違和感があります。
これまでの地場産業とどこが違うのか、
コミュニティをどう考えているのか、
ビジネスモデルとしてのコンセプトはどうなのか、
などが余り見えてこないからです。
そうした議論をもっとしっかりとやることが大切です。

この本では、そうしたことがわかりやすく、多面的に書かれています。
時代背景を踏まえた、コミュニティビジネスの概念整理の展開に続いて、具
体的な事例がいくつかしっかりと紹介されています。
NPOや地域通貨などとの関係も語られています。
新しいビジネスモデルに向けての示唆も感じられます。
コミュニティビジネスに関心のある方は、きっと頭が整理されます。
読みやすいので気軽に読めるのもいいです。

藤江さんは、昔からの友人です。
企業のコミュニケーション戦略の分野で、実践と研究の両面で、しっかりと取り組んできた人です。
しかも、私と違って、活動や研究の成果をきちんとまとめて本にしてきています。
そのエネルギーにはいつも感服しています。
今は千葉商科大学の教授です。

最近はなかなか会う機会がないですが、不思議なことに、関心領域がいつもかなり重なっています。
いつか藤江さんともこの分野で何かをご一緒したいと思っています。 

■非営利組織の事業評価
大田黒夏生ほか、日本評論社 2400円

非営利組織の事業評価について、実践例を中心にわかりやすくまとめた本です。
ケースは日本財団が助成したプロジェクトです。
リサーチ&デベロップメントでは、かなり早い時期にこのテーマに取り組みだしました。
評価が今のように流行になる前のことです。

リサーチ&デベロップメントという会社をご存知でしょうか。
この会社の創業者のお一人牛窪一牛さんは、これもいち早く、米国のボルドリッジ賞に注目し、
日本での経営品質賞制度づくりに取り組んだ方です。
惜しくも急逝されましたが、本当に残念でした。
実はボルドリッジ賞の論文を日本で最初にハーバードビジネスレビューに翻訳したのは私と半田さんです。
まあ、それはどうでもいい話ですが、そのことをしっかりと評価してくれた最初の人が牛窪さんでした。
亡くなる少し前にサントリーホールで偶然にお会いしました。
もう少しいろいろとお話したかった方です。

今回、この本を送ってくださったのは、牛窪さんの後を継いで、
リサーチ&デベロップメントの経営に当たられている大田黒夏生さんです。
太田黒さんとのお付き合いも長いです。
東レ時代からです。
この人がまた実に個性的です。

今回、彼が手紙を添えてこの本を送ってきてくれたのは少し理由があります。
この事業評価プロジェクトの最初の段階で、私もささやかに関らせてもらったのです。
私も以前は「評価」に関心を持っていました。
それで委員会のコーディネーターを引き受けたのです。
その後、忘れていたのですが、
それが見事に育っていることを知って、とてもうれしく思いました。
そのことを言及して贈ってくれた大田黒さんにも感謝しなければいけません。

余計な前置きが長くなってしまいましたが、肝心の本の紹介です。
事例中心ですので、実践的です。
リサーチ&デベロップメントが実に丁寧に評価作業をしていることがよくわかります。

事業評価に関しては、多くの議論があります。
本もあります。
しかしみんな抽象的一般的です。
正直に言って、あんまり参考にはなりません。
しかし、この本はその点、現場や実務をベースにまとめられていますので、
実践者にはとても参考になると思います。

もちろん不満もあります。
言うまでもなく、「評価」は目的ではなく、「手段」です。
大切なのは評価ら始まる物語です。
その視点がもっとあるとよかったと思います。

私が昨今の行政評価の動きに否定的なのは、評価が目的になっている、あるいは管理型になっていいるからです。
目的のない活動が、今の日本には多すぎます。
目的が明確であれば、社会はもっとエネルギーを消費しないですむでしょう。
仕事も効率的になるでしょう。
理想は評価などない社会です。
昨今の評価ブームの現状にはどうしても違和感があります。

といいながら、山形市の行政評価に関らせてもらっています。
新しいスタイルが生み出されればいいのですが。

いろいろと書きましたが、
評価に関心のある人にはお勧めの1冊です。

■「NPOと企業 協働へのチャレンジ」
(パートナーシップ・サポートセンター岸田眞代 他編著 同文館出版 2100円 2003)

名古屋でNPO活動している岸田眞代さんは、元気な人です。
その岸田さんが主宰しているパートナーシップ・サポートセンターでは、昨年、各地でNPOと企業が協働して、地域や社会へ貢献して来ている活動を対象にした、パートナーシップ大賞をスタートさせました。
この本は、そこに応募してきた活動を中心に、NPOと企業の協働について、非常にわかりやすく、しかも実践的にまとめた本です。

大賞が選ばれた過程も、具体的にかかれていますから、読んでいくと協働事業の企画や評価に関する、生きた情報や知恵を得ることができます。
NPOと企業との協働は、これからますます広がっていくでしょうが、この本は最高のテキストです。
11の事例が紹介されていますが、それを読むだけでも、新しい時代の息吹が感じられるはずです。

NPO関係者はもちろん、企業の関係者へもお勧めの1冊です。

■『NPO運営者のマネジメント意識講座―アメリカの事例からの提案』
松原優佳著 価格:1,000円(10ドル) 発行:日本太平洋資料ネットワーク(JPRN) 出版:2001年 全51ページ (リングファイル形式)

「ウチの理事って、マネジメントに対する意識が低いんだよね。」とお嘆きの NPOス タッフの方に最適なテキストです。 組織運営の中でも組織の基礎を築く上で必要な、「活動理念と目標」「計画作 成の意 義」「資金計画と財務管理」「マーケティング」の4項目を取り上げ、アメリ カの事例をベースに、ケースの紹介、理論、具体的対策の提案やヒントを盛り込んで います。 「組織運営については○○さんに任せっきり」という理事の方に、マネジメントの意識をもたせるための基礎的な教科書としても活用できます。

『NPOの活用と実践〜夢と志の市民プロジェクトおこし〜』
大川新人著、日本地域社会研究所、2001年10月、1800円(税別)) です。

非営利の市民活動による社会的企業、コミュニティ再生、共生・参加型まちづくり、新 事業・雇用創出などのノウハウとマネジメント戦略がわかりやすく書かれています。
先駆的な米国の事例も紹介してあり、市民活動に取り組んでいる人はもちろんですが、企業関係者にもぜひ読んでもらいたい本です。

著者の大川さんは、米国クリーブランドの大学院でNPOマネジメントを学び、その知見を活かしてコミュニティに飛び込んで、NPOを活用した住民主導の地域経営の手法を研究・実践しています。
NPOのマネジメントについての相談にも応じています。
NPOという言葉は、日本ではまだまだ認知度が低いですが、それ以上にNPOの実態への理解は進んでいません、
NPO研究かと言われる人も必ずしも理解しているとは言えないほど、実態は多様で動いています。
大川さんは、そうしたどんどん進化しているNPOに実践的に関わりながら、新しい社会づくりに関わって生きたいという思いを持った、若い情熱家です。
できれば彼と一緒に、私もNPOの本づくりにも取り組みたいと思っています。

この本を入手したい方は書店で購入してもらってもいいのですが、大川さんに直接お会いするのもいいかもしれません。
大川さんのメールアドレスは次の通りです。
aokawa@tkf.att.ne.jp

■『非営利組織の成果重視マネジメント』
――NPO・行政・公益法人のための「自己評価手法」

P.F.ドラッカー/G.J.スターン編著 田中弥生監訳

〔訳者の田中弥生さんからのメッセージ〕

NPO、NGOへの関心はますます高まっています。今後は善意の主体を越えて、社会的存 在としての意味をも問われることでしょうか。  
NPO、NGOなどの非営利組織の難しさは、成果を計るための共通の基準がない点にあ ります。
ドラッカーは、50年以上前から米国の非営利組織に関わってきましたが、 すぐにこの本質的な問題点を見抜いたようです。  

本著は、経営学の巨砲、P.F.ドラッカーが非営利組織の向上を目的に、顧客概念を とりいれた改善目的の評価手法を解説したものです。
基本的な考え方に加え手法の使 い方の手順が詳しく記されています。
さらに、ここでは日本への適用事例を含めました。
それゆえ、ドラッカー氏がその序文で賞してくださっているように、単なる米国 の著書の翻訳本ではありません。
ドラーカー氏が提示したこの評価の考え方はかなり不偏的なもので、おそらく営利で判断できない類いの活動に広く適用してみることができるでしょう。
皆様にも是非、活用していただければ幸いです。

内容は次の通りです。
[ PART I ] 自己評価のための5つの質問 ――評価プロセス参加者用ワークブック
質問1:われわれの使命は何か?
質問2:われわれの顧客は誰か?
質問3:顧客は何を価値あるものと考えるか?
質問4:われわれの成果は何か?
質問5:われわれの計画は何か?

[ PART II ] 自己評価の3つのフェーズ ――評価プロセスのガイドライン
フェーズ1:自己評価のための準備をする
フェーズ2:自己評価を実施する
フェーズ3:計画を完成させる

[ PART III ] 日本における自己評価手法の適用事例
事例1:われわれの使命は何か?――コミュニティ・サポートセンター神戸
事例2:われわれの顧客は誰か?――飯塚こども劇場
事例3:あなたの顧客は誰か?――グループたすけあい
事例4:われわれの成果は何か?――骨髄バンク

■「続・入門社会開発 〜PLA:住民主体の学習と行動による開発」
出版社:国際開発ジャーナル社(ホームページ: http://www.idj.co.jp)
新書判約300頁、定価(本体1,429円+税)I

湯島のサロンにも何回か参加された田中雅子さんが各国で活動している仲間たちと書いた本です。
ネパールやバングラデシュで活動している実践をもとに彼女も書いています。
彼女によれば、開発援助に関る方を念頭に書いたが、日本で「住民参加型」の合意形成に関る方にも読んでほしいと言っています。
彼女からは時々活動報告を聞かせてもらったりしていますが、いつか是非本にしてほ しいと思っています。
実に感動的な実体のある活動をされています。

著者はプロジェクトPLAというグループです。
架空の国、村を舞台に活動するNGOと日本人の姿をドキュメンタリータッチでつづるパート1と、住民参加型開発の新たなアプローチであるPLA (Participatory Learning and Action) を現場型の視点から解説するパート2 の二部構成。
理論と実践を融合させた、開発に携わるすべての人たち必携の書。 (「はしがき」からの抜粋)

「開発」をどう進めるべきかを知っているという私たちの思い込みが、いかに間違ったものであるかを、この本は教えてくれます。そして、私たちがもっと上手にやるうえでの極めて重要な、パラダイム転換を指摘しています。変わらないといけないのは、私たちの思考様式、行動、態度、方法です。ぜひご一読下さい。