■「ただひとりの人間として――燦葉30年史」
燦葉出版社(電話03−3241−0049) 頒布価格3000円

すばらしい本のご紹介です。多分、一般の書店では購入できませんが。

オープンサロンにも時々参加してくれる白井隆之さんが燦葉出版社を興して30年目です。それを記念して、白井さんの半生と白井さんの出版活動を一緒に支えてきた仲間たちの思い出やメッセージを集めた本です。なんだ、ただの社史ではないか、と思われるかもしれません。たしかにそうです。でも、少し違うのです。

白井さんは生後まもなく病にかかり、後遺症を持ちました。今でも行動や言語に障害が残っています。子どもの頃は葛藤があったようですが、ある時から、「ありのままの自分でいくしかない」と心を決めて、その自分にこだわりながら、人生をしっかりと歩いてきた人です。

25歳で出版社を創設しました。それが燦葉出版社です。以来30年、200冊以上の書籍を刊行しています。いずれも白井さんご自身が心を込めてつくりあげてきた本です。そして、白井さんはその本をリュックに詰め込んで全国の書店に販売に回るのです。不自由な身体で、です。こういう想いを込めた本作りが、最近の出版会からは少なくなったように思います。私が書店周りをやめてからかなり立ちますが、それは書店の店頭で、バナナの叩き売りのようにすぐに消えそうな本が山済みにされている風景が好きでないからです。

とてもいい本です。みなさんにも読んでいただきたいし、白井さんとその本づくりのことを知っていただきたいと思い、この本を紹介させていただきます。

白井さんのあとがきの一節を、少し長いですが、引用させてもらいます。

目的地までに誰よりも速く先に着く事が、一番または優秀と評価する今日の社会、そういうふうに思い込んでいる人が実に多いと感じます。目的地には着く事で良いのですから、道々楽しむこと、道草をしながら歩いて行くことの方が、確実なすばらしい体験に出逢えると思います。(私は)この道草、寄り道が人生において大切な事と思って生きています。
私は身体にハンディが在ることで、周りの風景は良く見えますし、「普通人」よりも色々と多くの体験をさせてもらえるおかげで、 人生の「徳」をいただいていると感謝しています。またこの事で、今まで実に多くの方々に手を差し出していただいあたおかげで、今日があると思っています。
今、日本(人)は自分の事ばかりに関心を持ち、他人に目を向けることが以前より低下していると思います。 「袖振り合うも多生の縁」という言葉があるように、人との出会いと関係なくして人間は人生を歩んでいけるはずはないと思います。どうせ歩むんでしたら、皆と元気に楽しく助け合い、いわわり合って、お互いの違いを認め合った人生を過ごして生きたいと思います。

■YOSHI−天国からの贈りもの
燦葉出版社 安藤則子 2002年 1500円

もう1冊、米国で若い命を終えた、服部剛丈さんの本をご紹介します。
友人の燦葉出版社の白井さんの最新作のひとつです。

YOSHI。、服部剛丈(よしひろ)さんの米国でのニックネームです。
皆さんは覚えているでしょうか。
1992年のハロウィーンの夜、起こった不幸な事件を。
ルイジアナ州のハイスクールに留学していた服部君(そう呼んだほうが記憶がよみがえると思います) は、ハロウィーンのパーティに行く途中、訪ねる家を間違って44口径の銃で射殺されました。16歳でした。
服部君は、日本と米国の友好のために働きたいという思いで、米国に留学していたのです。
この事件を契機に、服部君のご両親は、クリントン大統領に対して「アメリカの家庭からの銃の撤去を求める請願書」を提出。米国における銃規制運動が始まりました。この後の話は、きっとみなさんはもう覚えているでしょう。

この本は、この服部君の事件を振り返りながら、実に多くのことを私たちに問いかけています。
この本を読んで、改めて9月11日の事件のことを考えてほしいなと、私は思います。

こうした本を白井さんは30年以上にわたり出版しています。
燦葉出版社もぜひ応援して下さい。
燦葉出版社と白井さんのことは前に紹介しました。ご覧下さい。
電話は03−3241−0049
最新刊です。ぜひ購入して下さい。白井さんがとても喜んでくれるはずです。
もちろん服部君も。

■ 二人の赤ちゃんイエスさま
ジーン・ジェッツェン 燦葉出版社 1143円

燦葉出版社の白井さんの思いを込めた絵本です。
1943年にアメリカのノースダコタ州の小さな町で実際に起きた実話を題材にした絵本です。富や貧しさとは無関係の、人間が本来有している愛と喜びと善意と感謝に満ちた心、相手の立場に立って思いやる事、そうした現代人が失いかけている"クリスマス・スピリット"が、ユーモアを交えながら見事に、一家族の行動をとおして、描かれています。心温まる小品です。立体感あふれる木版画も見事です。
白井さんは、クリスマスプレゼントにぜひ、と言っています。

白井さんはクリスチャンです。そういえば、もう1冊の木原さんもそうですね。
燦葉出版社では、このほかにも「世界で一番美しい星」などのクリスマス関係の本も出版しています。ホームページを一度見て下さい。