NPO支援 資金助成よりも活動支援を 
コミュニティケア活動支援センター事務局長 佐藤修

 この3年、NPO(非営利組織)支援プログラムの企画運営に取り組み、新しい支援の枠組みを構築してきた。NPOへの資金助成プログラムは、最近増えているが、その基本的な進め方に疑問があったからだ。
 幸い、趣旨に共感してくれる財団に支えられて、異色のプログラムを開発することができた。あえて対象を限定せずに、さまざまなNPOの相互支援の輪づくりを目指すコムケア活動プログラムだ。みんなが気持ちよく暮らせる社会に向けて、全国のNPOの支えあいの輪が少しずつ育ちはじめている。
  
 これまでのプログラムへの疑問とは、「資金提供だけでいいのか」ということだ。確かに、資金は市民活動にとっても重要な資源であり、必要としているNPOは多い。
 しかし、資金をもらっても、それを効果的に使えるかどうかが問題だ。安直に資金を支援してもらうことで、助成金への依存体質を助長している状況もないわけではない。
 われわれのところにも資金の相談はあるが、問題の所在は資金よりも活動の広げ方や組織のマネジメントの問題であることが多い。資金助成したある団体は、予算の半分も使わずに所期の目標を実現した。資金があることで行動に踏み出せたが、実際には資金は意外とかからなかったという。逆に資金の活用を間違って、一過性の活動に終わった事例もある。大切なのは、資金ではなく、その効果的な活かし方だ。

 NPOはそれぞれに得意分野を持っている。お互いに支援しあう関係が生まれれば、資金を使わずともかなりのことができる。福祉と芸術、子育てと環境問題など、異なるテーマに取り組むNPOのつながりから生まれた物語もある。
 「資金調達が最大の課題」と言うNPO関係者は多いが、むしろそうした発想から抜け出る必要がある。
 そもそもNPOの活動には、「経済至上主義からの脱却」という意味があったはずだが、いつの間に資金依存になっている。安直な資金助成が、そうした状況を助長する「危険な手段」にならないとは言い切れない。それでは社会は変わらない。
 NPO法成立以降、NPO法人の数は急増しているが、経済主義に取り込まれ、行政の下請けや企業の逃げ場になっているNPOも少なくない。行政主導で生まれたNPOには、予算削減対策としてつくられたようなものもあるし、行政の委託事業の受け皿となったために、本来の活動ができなくなったNPOもある。それでは市民のモチベーションは高まらないし、市民の視点での自立した活動にはなりにくい。
 経済的自立を目指した事業型NPOの動きも広がっているが、そこでの「事業」が吟味されていないために、企業活動との違いが見えにくい。企業が事業の延長上につくったNPOもある。それではNPOへの信頼感を損なうことにもなりかねない。
 日本のNPO活動は、これまでの社会のサブシステムに閉じ込められるか、新しい社会の枠組みを生み出す起爆剤になるかの岐路にある。経済至上主義や分業発想の延長ではない、新しい支援の思想が必要だ。
 NPOに今、最も必要なのは、ミッション実現のために活動を支える「知恵」と活動を進化させるための分野を超えた「つながり」だ。残念ながら、多くの支援プログラムは、資金は提供するが、そうした支援は用意されていない。
 資金助成だけのプログラムは、せっかく地道に活動してきた市民活動にとって経済主義への落とし穴になりかねない。資金だけではない支援の仕組みをもっと育てていくことが必要である。

2003年11月20日
(朝日新聞「私の視点」掲載の原文)