■「日本経済と信頼の経済学」
鍋山徹ほか 東洋経済新報社 1600円

週間記録で紹介した、日本政策投資銀行設備投資研究所の経済フォーラムをまとめた本です。筆者の一人が、週間記録で紹介した鍋山さんです。
ソーシャル・キャピタルという概念が注目されています。社会資本と訳してしまうと昔から言い古された言葉ですが、最近のソーシャル・キャピタルはそうではなく、人間関係、あるいは信頼や規範などを指しています。人間関係は組織を動かす潤滑油であり、経済の取引コストを左右する基盤要素です。そうしたことに着目して、最近のアメリカでは、人間関係やそれを規定する規範をソーシャル・キャピタルと呼んでいます。いま、さまざまな分野で関係論が重視されてきていますが、そうしたことの根底には社会構造原理および知の捉え方のパラダイムシフトがあるように思いますが、そんなややこしいことはともかく、経済の捉え方が大きく変わりつつあることを私は実感しています。
本書はそうしたソーシャル・キャピタルの再構築をテーマに、これからの社会の枠組みに関する整理と問題提起を行っています。
これからの企業、行政、NPOなどの役割分担や関係性を考える上で参考になります。ちょっと硬い本ではありますが、これから経済や社会のあり方にご関心のある方はお読みになるといいです。

鍋山さんの担当部署から、ちょっと一文を引用しておきます。

NPOを軸にした地域で様々な専門分野の人材が集まり100人規模の中小企業をつくっていく、というソーシャル・キャピタル的な考え方が広まっていくことで、中央からではなく地域単位での個性的な技術環境の創造が起きるのではないだろうか。

私の取り組んでいるコムケア活動にも通底する考え方です。