「文化がみの〜れ物語」(茨城出版社刊)の「はじめに」から引用

茨城県美野里町
みなさんはこの町をご存知でしょうか。
茨城県の真ん中、人口は三万人にも満たない小さな町です。
自然に恵まれた、とても平和でのどかな町です。

そこで数年前からとんでもないことが始まりました。
事の発端は文化センター建設の話です。
最初は住民参画型の活動でした。
まあ、それだけなら、そうめずらしくはないかもしれません。
しかし、対話と協調を基本にする町長のもとで、
住民主役・行政支援のまちづくりがどんどん広がっていったのです。

総合計画や都市計画の策定も住民主役・行政支援ではじまりました。
まだまだ十分とはいえませんが、
ともかく新しいまちづくり、新しい自治体行政が動き出したのです。

その出発点になった住民参画型の文化センターづくり。
全くの白紙から公募で集まった住民たちが構想をつくりあげていきました。
建設の動きに向けての活動は全住民に公開されていきました。
もちろん文化センター建設に反対する住民も少なくありませんでした。
そうした人たちを集めた公開シンポジウムも開かれました。

住民全員の合意ができたわけではありませんが、
文化センターはこの本が出る日にオープンされる予定です。
こけら落としは、住民の自主的な参加で生まれた劇団によるミュージカルです。
文化センターの管理運営も住民がルールをつくりました。

この物語は
そうした美野里町の文化センターづくりの物語です。
しかし、ただの文化センター建設の話ではありません。
美野里町という、なんでもない町で始まった、新しいまちづくりの話なのです。

その活動に関心を持った人たちが、ぜひこの物語を本にしようと考えました。
どうせ創るなら、自分たちでお金も汗も出してつくってしまおう。
しかも、文化センターに反対していた人もいれてしまおうということになりました。
それが新しい美野里町の文化です。

それまで本など書いたことのない人たちが創った本です。
本としての完成度は低いかもしれませんが、
私たちの思いを知っていただければ、とてもうれしいです。
そして
こうした動きが全国各地で広がっていくことを期待しています。

二〇〇二年一一月三日
美野里町文化センター物語制作委員会