私の経営観です

これからの企業のコア・コンピタンスの源泉は「いのち」

経営の本質は「愛と慈しみ」

佐藤修

「複雑系の企業論」『複雑系の経済学』(ダイヤモンド社1997年)所収から引用

 

経営とは「目的達成のために、一定の資源を使って、最良の結果を出すこと」である。「最良」かどうかを評価するのは企業ではなく社会である。その結果として、企業は社会から利益を与えられる。

経営とはただ儲けることではなく、「一定の資源を」を「最良の結果」に結びつけることである。 そのためには経営資源(いわゆるヒト・モノ・カネ・情報)の価値を最大限に引き出さねばならない。

近年の日本企業にはそうした発想は希薄である。社員は労働力としてほんの一部の能力しか活用されず、原材料は使いやすい部分だけを使って廃棄され、資金も情報も社会への配慮なく勝手に使い込まれている傾向が強い。これでは資源が本来持っているせっかくの価値(いのち)が活きてこない。もったいないことである。

資源の持つ価値を活かしていくためには、資源の「いのち」を輝かすことである。そのためには、資源を愛する(いとおしむ)ことである。社員を愛すること、信頼することが最大のエンパワーメントであり、原材料をいとおしむこと、無駄にしないことが最大のコストダウンにつながることを認識しなければならない。これらは社会が直面している問題(地球環境問題や高齢化問題)にも深くつながっている。

いのちとか愛するとかという言葉は、近年の企業経営には馴染みにくいが、そこにこそ、現在の企業の最大の問題点がある。社員を愛せない企業がお客様を満足させられるはずがないし、ましてや人間尊重などという理念を掲げられるはずがない。CS経営が一時的な流行に終わった原因は、まさにこの点にあるのではないだろうか。個の尊重やCS経営ということを考えるならば、企業経営者の口からもっと素直にいのちや愛という言葉が出てくるはずである。

これからの企業のコア・コンピタンスは「いのち」である。それをベースにした新しい企業論、経営論が必要になっている。

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